What’s up?

日々がたとえ繰り返しだとしても、僕はそれを愛しているんだ。

衛星タイタンの波の音

幾つかあるお気に入りのドキュメンタリー番組も取り上げる内容によって観たり観なかったりするんだけど、最近また『地球ドラマチック』がかなり面白い。

kugatsusuiyou.hateblo.jp

このオオカミと羊飼いの話以降にも視聴した回はあったんだけど、「つまらない」とまでは行かなくてもどこかで見たような内容だったり、そもそもタイトルから期待したような内容ではなかったりと暫く「ハズレ」が続いていた。

それが先週、先々週と2回に亘って放送された『イギリス恐竜図鑑』が久し振りにかなり面白く、更にそれよりも今週(というか昨日)放送された『カッシーニ 土星探査の軌跡』がとてもとても良かった。

www4.nhk.or.jp

孤独で勇敢な冒険者

ところで。
僕は昔から「宇宙探査機」が年代も国も規模も目的も問わず大好きで。

それは彼等がみんなロマンと鋼の意志と不屈の精神で出来ていて、無口で健気で一切の迷いもないから。

まあ、機械だけど。

それでも僕は「命」は「生物」だけに宿るとはどうしても思えない。
生物も機械と同様に反応や制御は微細な電気信号で行われているし、生物も機械も原子レベルまで分解すれば僕と彼等には(元素の数や種類以外)何の違いもなくなる。

「土星の輪は複数から成りその輪と輪の間には空間がある」という事を突き止め、土星の4つの衛星を発見したパリ天文台の初代台長でもある偉大な天文学者「ジョヴァンニ・カッシーニ」の名を冠された彼は、2017年9月15日に最後のミッションを終えた。

土星とは

恒常的な輪と60個以上の衛星を持ち、太陽系の中で2番目に大きな天体。
その体積は地球の700倍以上だが殆どが水素とヘリウムで出来ているので質量はとても軽いガス惑星。
大気中には秒速数百メートルもの強風が吹き荒れ、気温はおよそマイナス180度。

そして今回カッシーニが土星の磁軸を調査したところ、自転軸と磁軸が重なっていることが判明。
これは土星の磁場が消滅しつつあるのか、それとも他の天体とは異なる独自のシステムで磁場を生み出しているのか…(この謎について番組では明らかにされなかった。)

液体が存在する天体

土星最大の衛星「タイタン」。
(この衛星を発見したのはクリスチャン・ホイヘンスで、彼は土星に付属する奇妙なものが「輪」であると解明した人物でもある。)

地球と同じく大気はほぼ窒素で出来ているが酸素は殆ど無く、メタンとエタンが含まれた液体天然ガスのような湖がある。

「液体」を持つ天体は、太陽系で地球と衛星タイタンのみ。

そこに時々雨が降る。
タイタンの雨は地球よりもゆっくりと落ちて大きな水飛沫が出来る。
重力が地球の7分の1しかないからだ。

大気も冷たく密度が大きいから、地球よりも早く音が伝わる。

タイタンの岸辺に打ち寄せる波の音はどんなだろう。

生命体存在の可能性

表面を氷で覆われた直径およそ500キロの小さな衛星「エンケラドス」。
今回のカッシーニの調査により、氷の層から30キロほど地下に海が存在している事が分かった。

更には「ナノシリカ」という微粒子も発見され、その微粒子が熱水環境でしか形成されないと考えられている事から、この衛星の海底に熱水噴出孔が存在する可能性が出てきた。

それはそのまま地球外生命体発見の可能性にも繋がる。

土星の輪

太陽系の巨大ガス惑星にいずれもある輪はどれも微かに見える程度だけれど、土星の輪は14万キロ以上にも亘って広がっている。
その輪の殆どは氷で出来ていてあとは「チリ」が集まったものなんだけど、その粒子の正確な正体は分かっていない。

今回の調査でその輪の中に小さな衛星や新しく「プロペラ」と呼ばれる天体の集合体が何百、何千と発見された。
「プロペラ」は輪の中で激しく回転しながら周りにある粒子をどんどん纏っていく。

これが惑星が生まれる「初期段階」だとすれば、45億年前の惑星が形成されるプロセスを土星の輪を観測する事で解明されるかもしれない。

おやすみカッシーニ

30年以上も前に作られ、打ち上げから7年をかけて土星に到達し、スマホにも及ばない処理能力で10年以上にも亘って土星を探査・調査し、2017年4月からの5ヶ月間は「土星と輪の間の空間を時速12万キロで通過する」という過酷なミッションを週一で繰り返した。

そして、生まれた場所から15億キロも離れた見知らぬ星の大気の中で、最後は太陽の表面と同じくらいの温度になってカッシーニは燃え尽きる。

1997年10月15日に土星へと打ち上げられてから漆黒の宇宙をたったひとり、多くのミッションと大きな期待をその身に携え、見事に遣り遂げた、彼の20年間が燃え尽きる。

所詮CGだし、想像図だけど、やっぱり泣いてしまった。

お疲れ、おやすみ、カッシーニ。


宇宙探査機 (ポピュラーサイエンス)

宇宙探査機 (ポピュラーサイエンス)


ボイジャー1号・2号は共に太陽系空間の果てを今この時も進んでいる。

未だ見ぬ誰かへの、金のレコード盤を乗せて。