投げっぱなしの色々なシリーズ(?)も少しずつ回収していこう、と。
まずは”紙一重の天才”明智抄から。
とは言え所蔵作品(小説と自費出版本以外)は全部やろうと思っているのでこれもきっと長丁場は必至。
ブスは女性としての権利を持たない
『女の十字架』
続く「否 むしろ女性の資格を持たない」というようなモノローグで始まる表題作を筆頭に「明智抄読んだことないんです」っていう人には一番薦められない短編集。
収録4作品(目次の5番目『僕達の祝日』は巻末のオマケのようなもの)の中で『若人の倫理』も筆舌に尽くし難い衝撃作なんだけど、彼女の真骨頂は『女の勲章』の一場面。
主人公カップルが喧嘩になり部屋を飛び出した女を男が渋々追いかける、車道を挟んだ向こう側に女の後ろ姿を見つけ呼びかけるが女は振り向かずに歩いて行く。それでも猶追いかけようと男がガードレールを超えて車道に出た次の瞬間、背後には車のヘッドライトが。
その次のページの2コマ目、事故の音に驚いて振り向いた女は、実は「女装のおじさん(ヒゲ面・割れアゴ)」だった。
ってそんな展開、いる?
ラインナップがスゴ過ぎて十分ヘンな『音痴殺人事件!?』が最早オアシス。
…ヒーリングってね ホントは誰でもできるんだよ
『図説オカルト恋愛辞典』
先ほどとは打って変わって(きっと)万人に(おそらく)安心してお薦めできる良質な短編集。
タイトルに「オカルト」とあるけれど、怖い要素は限りなく少ない。
僕が特に好きなのは『片思いの女の子』。
「生き霊がとぶほど僕を思ってる女の子がいる」
他に『蝶々になった女の子』や『花子さんのいるところ』など、ほんと全部が良作。
奥さんには郷ひろみさんの御加護があるんですね
『毎日のセレモニー』
こちらも『女の十字架』同様、免疫のない人には薦めにくい一冊ながらも収録5作品のうち表題作はハートフル、『だだ宣言』は(ある意味)至極真っ当な恋愛モノ、と言えなくもない、かな。
そして残る3作品のうち『ファンタスティック』と『JRのせいね』は登場人物全員が見事にどこかズレている。いや、人間はみんな端から見ればどこかしらズレているものなのかも、とか思ったりもするけど、やっぱりそういう論点は軽く超えてしまっている気がする。
あと、『15年目のシャルル・ボネ症候群』もかなり好き、なんだけど。
「ほんのちょっと初恋につまづいただけ」ではないと思う。
悪のご用命はドクター・スケルトンへ
『キャプテン・コズミック』
宇宙の平和と秩序を守る”正義のヒーロー”キャプテン・コズミックと、宇宙に破壊と恐怖をもたらす”悪の天才科学者”ドクター・スケルトンの宿命の二人が火花を散らすSF作品(でもない)。
「優秀な頭脳に必ずしも優れた人格が宿るとは限らないのは人類という種が持つ大きな欠点」
とか、
「愛に負けたからと言って伝説にキズをつけるものでもあるまい」
とか、名言も多数。
明智抄の「短編集」の中では一番好きな一冊。
で、シリーズ次回は(ほぼ「発売された順」に書いているので)彼女の作品いち好きな『サンプル・キティ』(全4巻)。
これは異常だろうが何だろうが、超絶推し。