もう何度も何度も観ている。
何度観ても面白いし、何度観ても胸がジンとなる。
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『パーマネント野ばら』(2010年/日本)
簡単なあらすじ
ある田舎の漁村にある唯一の美容院「パーマネント野ばら」。なおこは離婚し、娘を連れて母の経営するこの美容院に身を寄せている。美容院は町の女たちの「たまり場」と化していて、あけっぴろげに自分たちの悲哀や愚痴をこぼし合い、罵り合い、笑いあっていた。
なおこの二人の友人も男運が悪く、みっちゃんはフィリプンパブを経営しながらヒモ男に金をせびられ、ともちゃんも付き合う男が皆暴力男で、捨てられてばかりいる。なおこ自身も、地元中学校教師のカシマと密会を繰り返していた。しかし、愛情を感じながらもなおこは掴み所のないカシマの態度に、戸惑いと孤独を感じていた。(Wikipediaより)
菅野美穂(なおこ)
いなか町の何でもない日常が進んでいく中で一見すると一番どこにでもいそうな雰囲気の主人公なおこ。
更に彼女を取り巻く登場人物のほぼ全員がインパクトあり過ぎて割と影の薄い主人公なんだけど、だからこそ一番難しい役だったと思うし、改めて菅野美穂は良い女優だなと思った。
相手によって接し方を少しずつ変えて、誰に対しても少し距離があるというか、心が現実を拒否している感じが本当にうまい。
電話ボックスで思いを吐き出すシーンはかなり胸に迫るモノがある。
池脇千鶴(ともちゃん)
子供の頃からあまり主体性がなく流されるままに生きているからか男性遍歴がかなり悲惨なんだけど、どこか飄々としていて自身に起こっている不幸をまるで人事のように受け流す。
池脇千鶴はジョゼ(映画『ジョゼと虎と魚たち』の足が不自由な主人公)が凄すぎてここでの役柄はかなり物足りなかった。
けれど菅野美穂同様こういう役をちゃんと物足りなく出来る、というのがやはり素晴らしい。
貧しい集落の中でもとりわけ貧しい家庭に生れ、その事を幼馴染みにからかわれて育ち、年頃になってからは歴代の彼氏(一人を除く)から殴られ捨てられ。
だけどそれを特に嘆く風でもなく、唯一自分を殴らなかった男(旦那)との別れの際にも感情を見せることもなく、まるで何事もなかったかのように笑っていた。
だけど、なのか、だから、なのか。
彼女は友だちの傷にも飄々と優しい。
小池栄子(みっちゃん)
この映画を繰り返し観る理由の9割が小池栄子。
「あたしは何本やちいけるき」という第一声と田舎のヤンキー感満載のファッション、さらには両手に魚3本と小魚が入った鍋を小脇に抱えて華麗に登場するシーンでもう心を鷲掴みにされた。
(そしてその姿で泣かれても面白いだけ。)
その後も旦那の浮気にぶち切れて修羅場になったり(それがもう本当に修羅場)経営するフィリピンパブで開いたパーティーでのフォトジェニックぶりなど、見せ場があり過ぎて枚挙に暇がないんだけど。
圧巻はラスト近く。
僕は数ある面白シーンではなく、この浜辺での彼女の芝居を観て「女優・小池栄子」が大好きになった。
他にも魅力的な面々
まずは。
なおこの母親であり「パーマネント野ばら」の女主人まさ子を演じる夏木マリ。
普段からそうなんじゃないの?ってくらいにキツめのパンチと咥えタバコが似合い過ぎてカッコいい。
だけど視線とか眉間の皺とかだけで娘を思う母親になったりパーマ屋の逞しい女主人になったり、繊細な芝居も豪快な芝居もすごく自然でほんとに素晴らしかった。
次に。
みっちゃんのこれまたかなり個性的(?)な父親を演じた本田博太郎。
子供時代のシーンでの「ちび轢いたーー」が大好き。
なんだけど、このみっちゃんパパは同じ町に一番居て欲しくない人物でもある。
(まあ僕の居住地域は子供の頃からコンクリートだったから大丈夫っちゃあ大丈夫だけど。)
他にも(この映画での)宇崎竜童と見事な下ネタを繰り広げていた「野ばら」の常連おばちゃん3人組もよかった。
そういうワケで
この映画は「性にオープンな家庭」じゃない限り親子で観るのはやめておいた方がいい。
同じ理由で「下ネタ耐性」が無いまたは低い彼氏彼女と観るのもやめておいた方がいい。
きっと、かなり気まずくなると思うので。
美しいエンディングテーマ
本編が終わって余韻に浸っていると静かに始まる。
『train』さかいゆう(2010年)。
映画とリンクしているような、していないような。
「あてどなき旅」
それは一人でも、一人じゃなくても。
誰かを失っても、誰かに失われても。