17世紀、ひとりの数学者が謎に満ちた言葉を残した。「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」以後、あまりにも有名になったこの数学界最大の超難問「フェルマーの最終定理」への挑戦が始まったが──。天才数学者ワイルズの完全証明に至る波乱のドラマを軸に、3世紀に及ぶ数学者たちの苦闘を描く、感動の数学ノンフィクション!(裏表紙より)
- 作者: サイモンシン,Simon Singh,青木薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/05/30
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『フェルマーの最終定理』S・シン
「識る」という喜び
読みたいな、と思ってから、実際に手に取るまでに約10年が過ぎて。
そこから、読むまでに更に2年が過ぎた。
けれどこの「数学界最大の超難問」が完全証明されるのにかかった時間を思えば、12年なんてあっという間。
xn + yn = zn
この方程式はnが2より大きい場合には整数解をもたない。
一見するとシンプルこの上ない定理。
けれどその「nが2より大きい場合」は何処までも無限にある。
ではその無限をどう引っ括めて、どう証明したのか?
という、その難問への具体的な解答はこの本には書かれていない。
というのも、それを完全に理解出来る数学者は世界でも5、6人しかいないらしい。
なのでここには「フェルマーの最終定理」に直接的・間接的に関わってきた名だたる数学者たちとその歴史と、このテーマの起源である古代ギリシャまで遡り「数学」がいつ、誰によって、どのように確立されて現代まで至るか、という数学そのものの歴史とに触れながら。
この物語の一番の主人公であるイギリス人数学者ワイルズが「数学界最大の超難問」に出会い、魅了され、たった一人でこの謎に挑み、遂には証明に至るという、作者S・シンが言うところの「二十世紀のもっとも驚くべき知的な旅の一つ」がまさに極上の語りで描かれている。
けれども、やっぱり。
公理や論理がもっと感覚的に、ダイレクトに理解できたらもっと面白いだろうな、と思った。
作者が巻末に載せてくれている補遺を読み、それなりに楽しむ事はできるんだけど、なんていうか。
全く知らない言語の文章を母語に訳しながら読むのと、母語の文章をそのまま読むのとの違い、みたいな、手順のもどかしさと理解の及ぶ範囲が限定されている感じがあって。
それこそ、フェルマーは無理でも、いつか全てのピースがビシっと嵌るような。
そんな読後感を得たいな。
ヒルベルトのホテル
この架空のホテルは、部屋数が無限だというたいへんに魅力的な性質をもっている。ある日このホテルに一人の客が到着し、部屋数が無限であるにもかかわらず満室と聞いてがっかりする。フロント係のヒルベルトはちょっと思案したのち、なんとかお部屋をご用意いたしましょう、と言った。そして彼は滞在中のすべての客に、一つ隣の部屋に移ってくれるよう頼んだのである。ルーム1の客はルーム2へ、ルーム2の客はルーム3へ......。こうすれば、滞在中の客にはこれまで通り部屋があり、新米の客も空いたルーム1に滑り込むことができる。ここからわかるように、無限に数字1を加えてもやはり無限である。(本書164-165Pより抜粋)
つぎの夜には、この満室のホテルに大きさ無限大のバスが、無限人の客を乗せて到着するんだけど。
これにも、ヒルベルトは難なく部屋を用意する。
「無限にかかわる概念をどう扱うか」
こういうの、一日中でも考えていられる。
『映画館の常連たち』
この世界と同じくらい大きな鋼鉄の玉があり、一匹の蝿が百万年に一度その上に止まるものとしよう。鋼鉄の玉がすりへってすべてなくなったとき、永遠はまだはじまってもいないのだ(本書255-256Pより抜粋)
こちらは、作家のデイヴィッド・ロッジが見出しのタイトルの作品のなかで、無限の概念によく似た永遠の概念を描き出した一節として引用されている。
もちろん、読んでみたくて検索をかけたんだけど。
残念ながら、見当たらない。
サイモン・シンと青木薫
最後に。
『フェルマーの最終定理』の「序」を読み始めてすぐに、僕は作者を確認した。
確か外国人だったはず、と。
そのくらい、そこに書かれている文章は自然だった。
また「序」に戻って暫く読み進んでから、今度は、その下の訳者の短いプロフィールを確認した。
理学博士。なるほど。
そのくらい、科学や数学についての記述が理路整然としていて読み易かった。
そして。
このペアの本をもっと読みたいな、と。
欲しいものリストに入れていた『暗号解読』を、まさにフェルマーを読み終えた翌日に、リアル書店でパートナーが買って帰って来た。
- 作者: サイモンシン,Simon Singh,青木薫
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本当に。
本は幾らでも買ってくれる。
タエコ(*僕の母)かよ!
けれど。
この後は。
先にSF小説を2冊ほどやっつける予定。